「死」と向き合う日常

高齢者介護の現場にいると、日常的に「死」というものに直面します。これは他の職業ではあまりない経験かもしれません。

多くの人にとって、死は遠い存在であり、身内や友人の死、あるいはニュースなどを通じてしか実感しないものです。しかし、介護の現場では、死は避けて通れない現実です。私はこれまでに何十人もの最期を見届けてきましたし、心肺停止の場面でAEDや心臓マッサージを行ったことも何度もあります。それでも、命の終わりは訪れます。その瞬間に立ち会うたびに、私は深く考えさせられます。

高齢者介護の仕事に携わるようになってから、「死」というものが決して特別なことではないと感じるようになりました。それは、人生の一部であり、自然な流れなのです。高齢者の方々は、その人生を長く生きてこられ、最後の時が近づいていることを自覚されている方も多いです。そのような中で、私たち介護職員は、その人がどのように最後の時間を過ごすかに深く関わります。単に身体的なケアだけでなく、精神的な安心感や尊厳を保ちながら、最期の瞬間を迎えられるよう支援することが私たちの役割です。

「死」と向き合うことは、最初は非常に重く、辛い経験でした。人が命を終える瞬間に立ち会うたびに、何か大切なものを失うような気持ちになりました。しかし、次第にその感覚は変わってきました。死は避けられない現実であり、誰もが必ず迎えるものだということを受け入れるようになったのです。最期の時を迎える方々に対して、自分ができることは何か、どうすれば少しでも安らかな気持ちで旅立つことができるかを考えるようになりました。

もちろん、全ての死が穏やかなものではありません。時には、突然の急変や予想外の出来事があり、緊急の対応を迫られることもあります。そんな時こそ、私たち介護職員は冷静であることが求められます。命を救うために最善を尽くしつつも、その結果として訪れる死もまた受け入れなければなりません。どれだけ準備をしていても、その瞬間が訪れる時の緊張感や無力感は慣れるものではありません。それでも、その人の最後を見届けることに対して誇りを持ち、責任を感じています。

高齢者介護の現場では、日々のケアの中に「死」が潜んでいますが、それは決して悲観的なものではありません。むしろ、その人の人生の最後を支えることで、私たちも多くのことを学び、感じることができるのです。死と向き合うことは、人生の終わりを見つめると同時に、自分自身の生き方を問い直す機会にもなります。高齢者の方々が、最期まで尊厳を持って過ごせるような介護を続けていくこと。それが、私たちに課された使命であり、日々の仕事の中で意識していることです。

死は避けられない現実ですが、それをどのように迎えるかは私たち次第です。介護の現場で得たこの経験は、私自身にとっても人生の大きな教訓となり、これからの仕事や生き方に深く影響を与えています。