人の世話になることをどう受け止めるか

介護の現場にいると、「人の世話になるなんて申し訳ない」「自分でできないことが情けない」と感じる方も多いです。確かに、できていたことができなくなることに対して、落胆や無力感を覚えるのは自然なことかもしれません。

一方で、「できる人ができない人を助けるのは当然」と考える方もいます。これは、介護や支援の本質に通じる考え方です。誰しも一生の中で他人の力を借りる時期が来ますし、逆に誰かを支える役割になる時期もあります。そう考えると、助けられることも、助けることも、どちらも大切な社会の一部なのです。

特に高齢になって身体的にできなくなったことが増えてくると、「自分一人ではもう無理だ」と感じる瞬間が増えます。しかし、介護は単なる「お世話」ではなく、支援する側も受ける側も共に過ごし、より良い生活を目指すための協力関係です。

それでも、他人、特に家族以外の人に世話をされることに対して抵抗感を持つ人は少なくありません。「家族以外に世話をされるなんて」と思うのは自然な反応ですが、現代社会においては、介護のプロフェッショナルが生活の質を支える役割を担っているのも事実です。介護職は、その方の自尊心を尊重しながら、できる限りその人らしい生活をサポートすることが求められます。

介護する側としては、相手のプライドや感情に寄り添いながら、何がその人にとって心地よいのか、どの程度の介助が必要なのかを見極めることが重要です。「やりすぎる」ことで相手の自立心を損なうこともありますし、「足りない」ことで不安や不快感を抱かせることもあります。バランスを取りながら、その人の気持ちに寄り添う姿勢が大切です。

介護は、単に身体を助ける行為だけでなく、その人の尊厳を支えることも含まれています。自分でできなくなってしまったことに対して「情けない」と思う気持ちも理解しつつ、「助け合いは当然のこと」と思えるような関係を築いていくことが、介護をする側の大切な役割です。