私たちが介護の仕事をしていると、どうしても「高齢者=介護が必要」と捉えがちになります。もちろん、現実には元気で活発な高齢者も多くいますが、日常業務の中で接する高齢者の多くが、何らかの支援や介護を必要としているため、そのような偏りが生まれるのかもしれません。
ただ、このような偏った視点が、元気な高齢者に対する適切な支援を考える機会を奪っていることもあるのではないでしょうか。元気なうちには支援が不要に思えるかもしれませんが、歳を重ねるとともに少しずつ体力が衰え、いずれ支援が必要な場面が訪れることが予測されます。そのとき、どのような支援が必要となるかを考えておくことが重要です。
例えば、元気な高齢者への支援として、趣味やコミュニティ活動を通じて社会とのつながりを保つ支援があります。地域でのスポーツや文化活動、ボランティア活動などに参加することは、心身の健康維持に大きく役立ちます。こうした活動を通じて「社会とのつながり」を感じることで、生活の活力を保ち続けることができるのです。
また、高齢者自身が主体的に活動できる場を提供することも支援の一環です。地域で定期的に集まるサークルや、シニア向けの学びの場、運動プログラムなどがそれに当たります。自分のペースで参加できる活動は、無理なく体を動かす機会となり、生活習慣病の予防にもつながります。
一方で、元気な高齢者の支援には、将来的な変化も視野に入れる必要があります。人は必ずしもいつまでも元気でいられるわけではありません。年齢を重ねるごとに、少しずつサポートが必要になる可能性が増します。そのときに備えて、今からできることを考えるのも支援の一つです。
例えば、「軽度の介護が必要になった場合に備える住環境整備」や「日常生活でのサポートを意識した健康管理」などが考えられます。元気なうちに「どのように支援を受けるか」を本人と話し合い、必要に応じて準備を進めておくことも、安心して最期まで暮らせる環境づくりにつながります。
元気な高齢者もいつかは支援を必要とする時期が訪れるかもしれません。しかし、本人にとっても周囲にとっても、事前に支援の準備ができていると、それだけでも安心感が増します。また、元気なうちに築いた人とのつながりや地域との関係は、支援が必要になった際に支えとなります。地域全体で、元気な高齢者を見守り、サポートし合う意識を持つことが大切ではないでしょうか。
高齢者支援は介護の現場だけでなく、地域社会全体で考えるべき課題です。元気なうちはその支援を必要としないように見えるかもしれませんが、年齢とともに変化する生活環境や心身の状態に応じた適切な支援が、最期までの人生を支える鍵となります。